「声優のマネージャー」という仕事 : ホリプロ・金成雄文さんインタビュー後編 ─【今どきエンタメ職業最前線~あるいはオタクなオシゴト事情~ 第1回】(2/2)

マネージャーに必要な要素は現場力・営業力・創造力

――お話自体はごもっともと思うのですが、仕事のボリュームがどんどん膨らんでいきそうですね。

金成:
 そこまで僕に集中しすぎる、ということはないです。弊社では、田所あずさに僕がつき、大橋彩香には別のひとりが、木戸衣吹にはさらに別のひとりが……という体制を取っておりますから。ただ裏を返すとその分だけ人件費がかさみますので、ビジネスとしての費用対効果はどんどん悪くなりますし、結局それは業績に跳ね返ってくるわけで、そこも大きな悩みですね。


――お仕事の中身としてはどういった内容となるのでしょうか。例えば、マネージャーさんは収録現場にはりつかれていらっしゃるイメージがあるのですが。

金成:
 現場に長時間とどまることはあんまり無いですね。もちろん、各現場には顔を出させていただきます。ただ収録現場にいるだけで新しいお仕事が増える、ということはなかなかないので。マネージャーとしての大きな仕事の一つとしては、業界のいろいろな方にお会いしに行く、ということが上げられます。お恥ずかしい話、弊社が声優のマネジメントをしていることを、まだまだご存じない方が沢山いらっしゃって、そういった方々にオーディションがあったらぜひお声をおかけください、とお願いし続けることが重要ですね。ご挨拶に伺う先は、テレビ局、広告代理店、出版社、ゲーム会社などたくさんあって、身が一つじゃたりないくらいです。


――マネージャーという単語のイメージから、どうしても声優さんのスケジューリングが主なお仕事と勘違いしてしまうのですが、営業やプロデューサーとしての側面も多分に含まれるのですね。

金成:
 上司の受け売りになるのですが、マネージャーに必要な要素は3つあり、その3つというのは現場力・営業力・創造力です。現場で関係者の方々としっかりコミュニケーションをすることができ、営業してオーディションや今後の仕事のつながりを作っていく。タレントの今後についてのプランを持ち、自ら企画していく。そういった要素が複合的に絡み合って、マネージャーとしての仕事を形成していますね。
 声優さんって、どちらかといえばセルフプロデュースをされるケースが多いと思うんです。もちろん、それでご成功されていらっしゃる方は沢山いらっしゃいますが、弊社は気質的にもっとタレントに関わりたがるんです笑


――そういったマネージャーの仕事をするにあたって、今後業界に入る方々が持っているとよい資質はどういったものでしょうか。

金成:
 すごく単純な話で恐縮なんですが、一緒にいて楽しい人、ですね。ぶっちゃけ、アニメに詳しい、アーティストに関する知識がすごい、といった要素はあとからどうにかなるんじゃないかと思うんです。それよりも、チームで戦っていくことになるので、一緒に同じ目標を目指して走れる人かどうかはすごく気にしますね。ですので、こういった資格があるといいよ、という具体的なアドバイスがしづらいんです。
 ただ弊社に関して言えば、声優アーティスト事業自体が、良くも悪くもまだまだ手探りの中でやっていることもありますが、社内でやってはいけないこと、というのが特にない状況です。つまり、新人であっても「これがやりたい!」という強い思いと社内を説得させられる企画営業力があれば、会社としてやれる土壌は整っているので、すぐにでも企画を形にできるのではないかと思います。ですので行動力がある人にとってはおすすめの会社じゃないかと思います。



――金成さんは現在何か企画を温められていらっしゃいますか。

金成:
 僕自身としては、これから所属の声優たちをもっともっと声優として認知してもらえるようにとにかく頑張りたいと思っていますし、そのための企画をいくつも仕込んでいる最中です。アニメ業界でお仕事をさせていただいているからこそ、でもあるのですが、やはりいつかはアニメを作りたいなって思うようになりますよね。アニメ作品の組成に関わる方法はいくらでもあると思いますが、僕自身二児の父ということもあり、自分の子供が将来まで愛してくれるような作品づくりに関わりたい、そこに自分が担当する声優を出演させたいということは考えますね。
 結局のところ、声優自身が自らの強みやオリジナリティを作っていくことでしか成功することはできないとは思うのですが、どうやったらそこを最大限サポートしてあげられるかは必死に考えているところです。

――最後に、今後、声優やアーティストを目指す方へのアドバイスもいただけますか。

金成:
 脳みそがやわらかいことが、今後今まで以上にすごく大きな強みになると思います。弊社が声優マネージメントをはじめた6年前と今が全然違うように、今後のアニメ業界がどう変わっていくのかはホントに未知数だと思っています。根幹は変わらずとも、先々どういった声優が求められるのかは分からないです。そういった環境に順応していくためには、凝り固まった頭では厳しいと思います。僕らマネージャーもその瞬間瞬間に求められている事を察知して提案していきたいと思っているので、そういったことに対応できて自分の個性を発揮できる方法を探していける人であってほしいですね。


――長時間、お時間をいただきありがとうございました!



著者紹介



著者名:株式会社ワクワーク 中山英樹
2012年よりオタク系ベンチャーに参加し、同社にて2013年に海外向け通販事業を立ち上げを行う。2015年10月に独立し、フリーランスとしてコンテンツを使用したプロモーションの企画立案などに携わる。2016年5月に若手向けのコンテンツ業界就職支援事業を行うため、株式会社ワクワークを立ち上げる。アニメイベントレポートやインタビューなどでライターとしても活動。
http://wakuwork.net/