「クリエイティブ・ディレクター」という仕事 : 面白法人カヤック・天野清之さんインタビュー ─【今どきエンタメ職業戦線~あるいはオタクのオシゴト事情~第2回】(1/4)

 8月も後半に差し掛かってはきたものの、暑さはいまだおさまらず、夏真っ盛りな今日このごろ。皆様いかがお過ごしでしょう。ワクワークの中山です。夏といえば、20年近く前、リアルタイムで追っていなかったエヴァンゲリオンが、劇場版公開のタイミングで、深夜にテレビ一挙放送をやっていたのをたまたま見かけて、一周遅れではまったことを覚えています。皆様にとって夏の思い出となるアニメはなんでしょうか。

 先週末、夏をテーマにしたアニメ映画「サマーウォーズ」が「金曜ロードSHOW」にて放送されました。私自身、大変思い入れの深い作品なので、Blu-rayを持っているもののテレビの前を離れられない2時間でした。そんな今回の放送に先立ち話題を呼んだのが、劇中の印象的な場面をモチーフにした特設サイト「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!! ボタン」です。作品のファンであれば、サイト名からしてニヤリとすることうけあいですが、いうなれば例のシーンが放送される瞬間、視聴者全員で同時に「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」をすることができるサイトです(「天空の城ラピュタ」の「バルス」にあたるものと考えていただければわかりやすいかもしれません)

 この特設サイトの影響もあり、放送当日、 #サマーウォーズ はTwitterのトレンドで世界一となり、これまた話題となりました。何を隠そう、この仕掛けを企画したのが、本日インタビューをさせていただく、面白法人カヤック クリエイティブ・ディレクターの天野清之さんです。

 1年で放送されるTVアニメの本数が200を超え、作品を盛り上げるための要素として、Webやイベントによるプロモーションも重要なポイントとなって久しい昨今、クリエイティブ・ディレクターという役割が手がける仕事の範疇は多岐にわたります。「サマーウォーズ」の細田守監督が手掛けた「バケモノの子」展での体験型展示ブースや<物語>シリーズのWeb・アプリなど、多数の作品を手がけられた天野さんに、お仕事の内容やキャリア、やりがいなどについて、お話を伺いました。

独学で勉強したFLASHがきっかけで「美容師」から映像業界へ

――まず天野さんのこれまでのご経歴について、教えていただけますでしょうか。

天野清之さん(以下、天野):
 カヤックのディレクターへ至るまで二回大きな転職がありまして、最初に就職したのが美容師だったんです。




カヤック:天野清之さん

――美容師ですか!? 今の天野さんのお仕事からは、まったく想像がつきません。

天野:
 その次に入ったのが映像業界です。CMやテレビ、映画などを作っている会社です。


――職種が大きく変わる転職ですね。

天野:
 もともと美容室に勤めるかたわら、クラブのイベントなどで映像編集を趣味としてやっていたんです。当時クラブカルチャーがまさしく盛り上がっているタイミングで、WOMBやageHaなどのクラブでVJをしてました。その時、映像の面白さにハマって、映像関連の仕事に移りたいなと思い、転職をしました。


――映像業界からさらに御社へ転職されるわけですが、なにかきっかけがあったのでしょうか。


天野:
 カヤックに移るきっかけとなったのは、FLASHです。最初は普通にアニメーション作成用のツールとして使っていたのですが、スクリプトを組めばできることがどんどん増えるので、独学でFLASHを勉強しているうちにその面白さにハマってしまいました。ちょうどインターネット黎明期だったこともあり、FLASHというツールを武器に、インターネットでもっと面白いことができるんじゃないかと思ったんです。

 そう思っていた矢先、「ブルードラゴン」というゲームの「interactive wall - BIG SHADOW PROJECT」(http://bigshadow.jp/entry/)というプロモーションに触れる機会がありました。プロジェクションマッピングを用いたその企画は、渋谷のビルの壁面に、その場にいるパーフォーマーと作品の題材であるドラゴンを、影としてリアルタイムで合成し投射するという、当時としてはかなり先進的な内容でした。関わっている方たちも超一流の方たちばかりで、そういう仕事を目の当たりにして、自分自身もこういったクリエイティブに関わる仕事をしたいなと、強い刺激をもらいました。




 同時期に、動画編集の波が個人にも押し寄せてきて、PremierやFinal CutなどのPCソフトを使えば、手軽にそこそこの品質の映像を作れるようになりつつありました。そうなると映像業界としては苦しくなってくるわけで。

 どうしたらいいんだろうと考えていた時に出会ったのが、「Wonderfl」(https://www.kayac.com/service/other/94)というサービスです。内容としては、Webブラウザ上でFLASHのソースコードをいじると、その内容がリアルタイムで反映されるというものです。もちろんそれ自体もすごいのですが、このサービスのもう一つの肝が、他の人が書いたソースコードがインターネット上に公開されていて、共有されていたことです。クリエイター同士でどんどん面白いソースを膨らましていけるというのが目に見えてわかって、「すごいこと考える会社があるな!」と思いました。この「Wonderfl」を開発していたのが、カヤックでした。同時期に「ART-Meter」(http://www.art-meter.com/)や「koebu」(現在、サービス終了)といった自分の目に飛び込んでくる面白いサービスがことごとくカヤックだったこともあり、人材募集のタイミングで応募した、という流れです。

カヤックではアスリートしか生き残れない…?

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