「クリエイティブ・ディレクター」という仕事 : 面白法人カヤック・天野清之さんインタビュー ─【今どきエンタメ職業戦線~あるいはオタクのオシゴト事情~第2回】(3/4)

アニメの仕事に入るきっかけとなったのは「初音ミクのドミノ・ピザ企画」


――そんなつらい時期の仕事はやはり今でも印象深いのものですか。

天野:
 そうですね。僕自身が一番最初に携わった仕事は日産LEAFのプロモーション企画(https://www.kayac.com/service/client/778)なのですが、このプロジェクトは、第10回東京インタラクティブ・アド・アワードでcci スマートデバイス広告部門で入賞することもできたため、非常に印象深いです。


―― 一発目から非常に大きなお仕事だったんですね。

天野:
 ええ。今でも忘れませんが、入社初日、入社用の書類を書き終わってすぐ、「広告代理店に行ってきて」といわれて(笑) ミーティングに参加したと思ったらそこからぶっ続けでブレインストーミングがはじまり、ひたすらアイデア出しをやりました。それが僕のカヤックでの初日の出来事です。
 それはまだ序の口で、僕自身Webの知識はもちろんあったのですが、プロジェクトに要求されているスキルが最先端過ぎて、「実装可能なものなのかどうかがそもそもわからない」というレベルからのスタートでした。




 もうひとつ印象的なのは、攻殻機動隊のお仕事(https://www.kayac.com/service/client/745)です。Kinectを使用して、渋谷パルコに展示した体験イベントなのですが、この仕事ではディレクターではなくCGエンジニアとして関わりました。業務内容としては、別のメンバーが実装してくれたCGをクリエイティブとミックスするパートです。ほかのメンバーとタッグを組み、自分自身も手を動かしながら作品を作っていくという、現在のディレクターとしてのスタイルを一番最初に学ばせてもらったのがこの仕事ですね。
 この仕事を通して、ディレクターとして足りないスキルを、自分が持っているほかのスキルで補うようにと意識するようになりました。仕事をただ待っているだけで新しい仕事が渡されるわけではないので、新しいプロジェクトが立ち上がる都度、サービスのモックを先んじて作り、「自分にこの仕事をやらせてほしい」とアピールしました。仕事ができないなりに自分の強みを上手く活かせたと思います。もちろん、足りない技術の勉強は並行して続けていました。


――攻殻機動隊のお仕事もそうですが、アニメの仕事を担当されるようになったきっかけはどういったことだったのでしょうか。


天野:
 そういったお仕事をたくさんいただけるようになったターニングポイントは、ドミノピザの初音ミクコラボ企画(https://www.kayac.com/service/client/1056)です。初音ミクをどのように実装するか、どういったコラボの仕方をすれば初音ミクのファン層に喜んでもらえるかなど、もろもろ企画やアイデアからご提案させていただきました。
クライアントであるドミノ・ピザの方々とも非常に良いチームワークで、良い結果となりました。この仕事を通じて自信を得ることもできましたし、技術的にも新しいことに挑戦できた。その結果、どんどん新しい仕事をいただくことが出来ました。



天野さんが手掛けたドミノピザの初音ミクコラボ企画

――もとからアニメなどが好きでいらっしゃったのですか。

天野:
 僕、生まれが中野なんですよ。今でも記憶に残っているんですが、中学のころ、中野ブロードウェイにまんだらけがオープンして、店員さんたちがゲームキャラのコスプレをしていたんです。そういう環境で育ったので、アニメや漫画は生活の中に当たり前に存在するものでした。その一方で、原宿にも行ける距離だったので、ファッションや音楽にも日常的に触れていました。原体験としてそれぞれの文化が自分の中に刻まれていたので、アニメもファッションも音楽も、すべて面白くて素晴らしいものという認識でしたし、自然と仕事でも関わりたいと思いましたね。


――今、自分自身が好きだったコンテンツのお仕事を多数されていますが、ご本人的な実感としてはいかがでしょうか。

天野:
 めちゃくちゃ面白いですし、ありがたいです。最近のお仕事では、西尾維新さんの作品に関連するプロジェクト(https://www.kayac.com/service/client/1535 / https://www.kayac.com/service/client/1535 )に携わらせていただいています。講談社、シャフト、アニプレックスとファンであれば名前を聞いただけでも嬉しくなるような会社の方々とお仕事ができる、それだけでも冥利に尽きます。
 もとからアニメや漫画が昔からちょうどよい距離感にあったので、ファンとしての視点に固執しすぎず、かといって遠くに離しすぎず作品をとらえた形で企画を提案させていただいたところ、気に入ってくださる方がいて、幸いにも今ではコンテンツに関連する仕事をたくさんいただいています。



西尾維新大辞展

――お話をお聞きしている感じでは、天野さんにとってお仕事とプライベートの境目がそこまでなさそうな印象を受けますが、その点はいかがでしょうか。

天野:
 以前から変わっていない自分自身のスタイルとして、仕事と趣味の明確な境界はないんです。仕事で関わったプロジェクトが次の自分の活動につながることもあれば、プライベートでやっていたことが新しい仕事のきっかけになることもあります。例えば、プライベートで半田ごての使い方を勉強していた中で、面白いことをしたいと考えて出来上がったのが光るスカート(http://hikaruskirt.tumblr.com/)です。技術的にはLEDを光らせる、という初歩的な技術ですが「視点を変えるだけで価値が生まれる」ということを実証できたと思っています。



光るスカート

――天野さん自身が楽しまれている作品を発表したら、それを見てくれたほかの方が別の仕事を発注してくれた、というよいサイクルがまわっている、ということでしょうか。

天野:
 そうですね。
なにより西尾維新先生ともお仕事の中でご一緒させていただいており、現在展開中(インタビュー時)の西尾維新大辞展(http://exhibition.ni.siois.in/)ではインタラクションのテクニカルディレクションは全て担当しています。その展示の中でも特に思い入れがあるのが「ゴーストタイピング」というコンテンツなんですが、西尾維新先生のタイピングをビジュアルとして、キーボードとパソコンモニターを使って完全再現しよう、というものでして。ファン心理としては、どうやって文章をつくられているのか、めちゃくちゃ気になるじゃないですか。それを視覚化する、という企画を実現できたことは本当にうれしいですね。


――ファンにとってそのシズル感はたまらないですね!

クリエイティブ・ディレクターの仕事の本質とは?

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