「クリエイティブ・ディレクター」という仕事 : 面白法人カヤック・天野清之さんインタビュー ─【今どきエンタメ職業戦線~あるいはオタクのオシゴト事情~第2回】(4/4)

クリエイティブ・ディレクターの価値は「企画が目指すべき本質的な価値を達成できるようにすること」

――話は変わるのですが、コンテンツ関連のお仕事とそれ以外のお仕事で進め方に違いはあったりしますでしょうか。

天野:
 プロジェクトによりけりですね。根本的な企画の部分を広告代理店サイドが固めてくださる場合は、僕自身はクリエイティブの中身を作ることに注力する形になります。一方で、直接クライアント企業の方とやりとりをする場合は、Webページを作るにしろ、展示内容を制作するにしろ、企画の中身から僕自身が提案するお仕事になる場合が多いです。


――今回「クリエイティブ・ディレクターというお仕事」についてお話をお伺いできればと思ったのですが、お話をお聞きしている限りでは、仕事の内容に幅がありそうですね。

天野:
 人によりけりなので、すべての方がそういうわけではないかもしれませんが、僕に関していえばそうですね。とはいえテクニカルな部分だけのお仕事、というのはあまりお受けしていないのが実情です。それは自分がテクニカルな課題解決だけでなく、最終的な演出としての見せ方まで落とし込むことまでをひとつの仕事として受けたいと思っているからです。最近は演出面から企画をどう面白くするか、といった点に自分自身の仕事の介在価値があると考えていますし、実際お仕事の内容もその点を期待いただいてのケースが多くなってきています。





――天野さんの手がけられた作品の数々をみた人たち、とりわけこれから就職をする人たちが「天野さんと同じような仕事をしたい」と思った場合、どうしたらクリエイティブディレクターという職につくことができるのでしょうか。

天野:
 クリエイティブ・ディレクターという仕事の根本的な価値は、「企画が目指すべき本質的な価値を達成できるようにすること」だと思うんです。その価値を実現するためには、2つ必要な要素があります。
 ひとつは「良い企画を設計できるようになること」、それはつまりプランナーとして仕事の場数を踏むということです。もうひとつは「プロジェクトの進行能力」。これはディレクターとしての業務ですね。プロジェクトの構成メンバーであるエンジニアやデザイナーをしっかりと束ねる、ということを経験することです。弊社でいうと、技術も理解し、進行も見れて、納品までやりきれるところまで行って、はじめてクリエイティブ・ディレクターという役割をはじめることができます。

 一方で、現在テクニカル寄りなことを学ばれている方は、その強みを伸ばして、テクニカル・ディレクターにまずなる、ということのほうが正攻法かもしれません。プロジェクトの規模感が大きくなれば必然的にマネージメント能力も求められ、いずれはクリエイティブ・ディレクターを任されるようになると思います。

 とはいえ、最近は仕事を職名で分類分けすること自体が難しくなってきているなとも感じます。肩書きでくくることにどこまで意味はあるのかな、と。「クリエイティブ・ディレクターだからこうあるべき」というものがあるわけではなく、究極的なことを言えば、自分自身が手掛けた作品を見て、新たにお仕事がいただけるのであれば、それはもうクリエイティブ・ディレクターとして成立している気がします。


――そういった点を踏まえ、学生のうちに経験しておいたことがよいことがあれば教えてください。

天野:
 自分自身が、業界で働いてもう10年近くなるのですが、最近特に思うのが「最終的には好きなところに戻ってくる」ということです。学生時代に好きだったもの、やりたいと思っていたことが、振り返ってみると僕の人格を形成していたのだなと気付くんです。大人になって、学生時代の自分の思い出を「くだらないことしてたな」なんて思い返す瞬間って、だれしもあると思うんですが、長期的にみたらそんなことは全然なくて。気づいたら点と点が繋がって線になっているように、なにかしらの意味が生まれてくるものです。

 だからこそこれからこの業界を目指す人達に伝えたいのは、「自分が面白いと思っているものを信じて、振り切った経験をしてほしい」ということです。音楽が好きだったら、フェスには毎年欠かすことなく参加する、とか。このとき重要なポイントとしては、相対評価を気にしないということです。「自分よりすごい人がいるから……」とかは本当にどうでもよくて。例えばキャンプに行って、となりの人を見て、「あっちのほうが良いテント使ってる」「あっちのほうが上手く建てられてる」と考えるのってまったく意味ないじゃないですか。目の前に雄大な自然が広がっていて、手を伸ばせば美味しそうなBBQをいつでも食べられる、それを楽しむ友達が隣りにいる。その状況を楽しむことに集中したほうが、その思い出は輝きますよね。




 仕事に置き換えても同じです。例えば広告の領域だったら広告賞というものがあります。人によって考え方はあるでしょうが、僕自身からすると、好きなコンテンツに関する仕事に携わることが出来て、もうそれだけで楽しい。広告賞を取ることとは別に、仕事を通じてファンからとても喜んでもらえる、それが何より嬉しい。それでいいんです。


――今後、これを達成したい、という目標はございますでしょうか。

天野:
 ふたつ野望があります。ひとつは、紅白歌合戦でイノベーションを起こすこと。自分が現在懇意にしているアーティストの方々とタッグを組んで、パフォーマンスや演出の中にあっと言わせる仕掛けを、弊社の技術をフル動員して仕込みたいですね。  もうひとつはオリンピックの仕事をすることです。2020年、自分が40歳を迎え、クリエイターとして一番脂が乗ったタイミングで、地元東京でオリンピックが開催される。このシチュエーションで心が震えないといったら絶対嘘ですよね。関わり方はいろいろあると思うのですが、どのような形であれ弊社の「視点をずらすことで生み出す価値」を大切にした仕事をできたらと思います。


――最後に、これからクリエイティブディレクターという仕事を目指す人たちへメッセージをいただけますか。

天野:
 クリエイティブ・ディレクターの醍醐味はシンプルで、企画のすべての領域に携われることだと思っています。人それぞれ考え方は違うと思いますが、企画の立ち上げから、実際にローンチするまで“関わることができる”と思える人は向いていると思います。逆に、最初から最後まで“関わらなくてはいけない”と思った人は、それぞれのセクションを突き詰めるという方向性があっているのかな、と。
 クリエイティブ・ディレクターという仕事は、エンジニアの方たちと同等レベルで技術のことは理解できなくてはいけないですし、プロジェクトの進行管理能力も、メンバーのマネージメント能力も必要。ハードルは高いですが、その分やりがいもあります。今後もっとフューチャーされていく仕事になるのではないかなと思っていますので、ひとりでも多くの方に志望していただけたらと思います。

――長時間お時間をいただきありがとうございました!




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著者紹介



著者名:株式会社ワクワーク 中山英樹
2012年よりオタク系ベンチャーに参加し、同社にて2013年に海外向け通販事業を立ち上げを行う。2015年10月に独立し、フリーランスとしてコンテンツを使用したプロモーションの企画立案などに携わる。2016年5月に若手向けのコンテンツ業界就職支援事業を行うため、株式会社ワクワークを立ち上げる。アニメイベントレポートやインタビューなどでライターとしても活動。
http://wakuwork.net/